| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T17-5

リモートセンシングとGISからみた湿原環境因子の空間分布構造

高田雅之(北海道環境科学研究センター)・井上 京(北大農学院)

北海道北部のサロベツ湿原を対象に、リモートセンシング及びGISを用いて水文・土壌・植生等の環境因子に関する面連続的な空間情報を構築するとともに、それをもとに環境因子の空間分布特性の評価を試みた。

まず本地域の特徴的地理因子である湿地溝、埋没河川、周縁河川等をGIS化するとともに、現地調査データをもとに航空レーザ測量データから地形、植生高、集水量の分布図を、衛星光学センサ(ALOS/AVNIR-2)から植生区分図を、さらに合成開口レーダ(ALOS/PALSAR)から土壌理化学因子の分布推定図(体積密度、有機物含有率、炭素含有率、窒素含有率、透水係数)を作成した。

次にこれらを用いて空間分布特性を分析した。まず湿地溝、埋没河川、周縁河川等からの距離と水文・土壌・植生・地形因子とのゾーン集計の結果、距離に応じた相関性が認められ、湿地溝等は環境因子の分布に重要な役割を果たしていることが判明した。次いでセミバリオグラム分析により地下水位と土壌理化学因子の空間相関性を比較した結果、地下水位の空間依存性の範囲がより広く、土壌因子の空間変動はより局地的であることが示された。またミズゴケ植生からササ植生へと変化する3測線上の環境変動を分析した結果、ササ前線付近で土壌因子と植生の変化にギャップが見られ、ササが拡大しやすい領域、反対に高層湿原植生への高い復元効果が期待される領域の抽出につながる知見が得られた。さらに全域を300mグリッドに分割し、水文・土壌・植生・地形の各因子を用いたクラスター分析と主成分分析を行った結果、環境変動が連続的なところと不連続的なところを明らかにした。前者は湿地溝や埋没河川など自然に形成された地形周辺で見られたのに対し、後者は河川の切替(直線化)といった人為的な攪乱地近傍に見られた。以上の成果は湿原の効果的な保全管理やモニタリング寄与するものと考える。


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