| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T31-1

趣旨説明

黒川紘子(横国大・環境情報)

生態学的現象の広域的な理解や、環境変動に伴う植生動態および生態系機能の変化の予測には、植物の機能的性質のデータを広範囲に渡ってまとめる必要がある。それらを目的としたデータベース構築・メタ解析が1990年代初頭から世界的に行われてきた。しかし、これらの活動に日本を含むアジア地域は殆ど含まれていない。日本における植物の機能的性質のデータベース構築は、世界のデータベースにアジア地域からのデータを提供するだけでなく、亜熱帯から冷帯(亜寒帯)を含む日本の地理的特性を生かし、植物の機能的性質に関する新たな仮説を検証する研究にも繋がるはずである。そこで、日本における植物機能的性質のデータベース構築・メタ解析の可能性を探るため、今回の集会を企画したい。

本企画集会では、まず、海外におけるネットワーク研究としてTRY(Plant Functional Classification for Earth System Modeling)やARC-NZ research network for Vegetation Function等の状況や方法論を黒川および小野田雄介さん(Macquarie University)が紹介する。次に、日本国内の状況として、生物季節データセットを用いてた例を土居秀幸さん(University Oldenburg)に、光合成および植物リター分解に関する研究とデータベース構築の意義などを、石田厚さん(森林総合研究所)、大園享司さん(京都大学生態学研究センター)にそれぞれ発表していただく。その上で、植物機能的性質のデータベース構築の可能性や、メタ解析でどのような新たな仮説が検証できるかなど、今後の研究展開について議論していきたい。また、知的財産権やデータ共有・利用に関する基本的原則、そしてJaLTERなど国内の他のネットワーク研究との連携についても触れていきたい。


日本生態学会