| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
企画集会 T31-3
機能発現のタイミングである,開花・発芽・落葉などのフェノロジー(生物季節)は,植物の繁殖・生育に重要であり,現在まで多くの研究がなされてきた。近年の地球温暖化により,その植物のフェノロジーのタイミングに大きな影響がでてきていることが近年明らかとなってきた。また,植物フェノロジーは,1年に1回しか観察されない現象であり,その精密な解析には長期的なデータが必要不可欠である。そして近年では,今まで蓄積されてきた長期データを使って,温暖化の植物フェノロジーへのさまざまな影響について研究され始めている。現在のところ,International phenological gardenでの長期的かつ広範囲なデータセットをもつヨーロッパで研究が先駆的に進んでいるが,実は日本にも,非常に有用なフェノロジーのデータセットが存在することは,あまり知られていない。気象庁では,1953年から現在まで全国102カ所の観測所で,のべ70種以上の植物種についてその開花・発芽・落葉などのフェノロジーが記録されている。また,同時に観測所では気温,降水,積雪などの気象データが蓄積されており,それら気象データを対応させて,詳細なフェノロジーの解析を行うことが可能である。本発表では,気象庁の生物季節データセットと気温などの気象データを使った研究事例を紹介する。さらに,気象庁などの政府機関が蓄積してきたデータセットを使うメリットと問題点について紹介したい。