| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T31-5

植物リター分解に関するデータベース構築の展望と課題

大園享司(京大・生態研)

1980年以降、植物リターの分解過程に関する広域的・長期的な分解プロジェクトが世界各地で進められてきた。これらのプロジェクトでは、気温や降水量などの環境変数と、リターのリグニン・窒素濃度といった化学性変数から、分解速度や分解にともなうリター化学性の変化、分解後に残存する有機物量などを推定するモデルを構築し、将来的な地球温暖化などの環境変動にともなう土壌分解系の変化を予測することを最終的な目的としている。わが国においても、将来的な地球温暖化などの環境変動に対して、森林生態系がどのように応答するのかを予測する必要性は大きい。その一環として、土壌分解系の機能や構造の変化が森林の炭素収支にどのように関連してくるのかを定量的に理解する必要がある。しかしこれまで、植物リターの分解に関する研究のほとんどが個々の調査地において個別的に行われてきた。またそれらの分解研究の多くでは、実験期間が3年以内と比較的短い。より長期にわたる分解過程を、多様な植物リターを材料として、より広域的に比較する研究はほとんど行われてこなかった。以上をふまえて今後は、1.日本と周辺のアジア地域における植物リターの化学性に関するデータの集積と、植物リターの分解速度・分解プロセスに関するデータの集積、これらのデータベース化、およびデータのメタ解析と、2.それをふまえた広域的、長期的な分解プロジェクトの実施、が必要だろう。その第一歩として、1.により構築されたデータベースに基づく分解モデルの適合性や、分解に及ぼす各種要因の抽出とそれらの相対的重要性、将来的な分解プロジェクトの具体的な方法論などを検討することが肝要であろう。本講演では、植物リター分解に関するデータベース構築に向けた具体的な項目および方法論の提案を行いたい。


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