| 要旨トップ | ESJ56 自由集会 一覧 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


自由集会 W05 -- 3月17日15:00-17:00 F会場

琵琶湖の生物多様性は維持できるのか?―レジームシフト進行中の古代湖―

企画者: 西野麻知子(琵琶湖環境科学研究セ), 佐々木寧(埼玉大・工)

琵琶湖は、古琵琶湖から数えて400万年、現在の湖が成立してからでも40数万年という世界でも有数の古代湖で、水生動植物の種数は分かっているだけで千数百種、固有種は60種以上にのぼる。しかし魚類漁獲量は長期的に減少傾向にあり、とくに1990年以降の減少が著しい。また滋賀県レッドデータブック2005年版では、絶滅危惧種、絶滅危機増大種および希少種に指定された固有種が全固有種の62%にのぼり、固有魚類では73%にも達する。

一方、琵琶湖南湖では、1960年代から富栄養化が進行して植物プランクトンが優占していたが、1994年に観測史上最低水位を記録して以降、沈水植物が繁茂して湖面をほぼ覆いつくし、水草優占の湖へとレジームシフトが起こったと考えられている。ただ南湖ではオオクチバス、ブルーギルが優占しており、南湖本来の豊かな在来生態系が回復したわけではない。

今後さらに固有種や在来種が減少し、外来生物が増加していけば、40数万年かけて形成されてきた琵琶湖の生態系が不可逆的に変化し、豊かな生物多様性が永久に失われる可能性が極めて高い。

この自由集会では、琵琶湖の生態系や生物多様性の現状をどう認識し、今後どのように保全、再生を考えていけばよいかについて、湖岸植生、水草、底生動物、水鳥および食物網の変化等の視点から議論したい。

1西野麻知子(琵琶湖環境科学研究センター)趣旨説明

2佐々木寧(埼玉大学・工)湖岸植生からみた琵琶湖の環境変遷

3浜端悦治(滋賀県立大学)南湖での沈水植物帯の拡大とレジームシフト

4奥田昇(京大生態研センター)高次捕食者から見た琵琶湖生態系:生物多様性のプロキシとしての食物連鎖長

5.*井上栄壮(信州大)・小林貞・西野麻知子:琵琶湖沿岸域におけるユスリカ相の現状―最近約10年間の変化

6.橋本啓史(名城大学)最近20年間における琵琶湖の湖岸域で越冬する水鳥の変遷


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