| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) E2-04

氾濫原湿地に造成された水田地帯における植物分布を規定する要因 -慣行田と休耕田の植物種組成の違い-

*石田真也(新潟大院・自然科学), 高野瀬洋一郎(新潟大・超域研究機構), 紙谷智彦(新潟大院・自然科学)

沖積平野における水田地帯の環境は、乾田化や除草剤の多用によって劇的に変化した。その結果、水田を生息地としていた多くの植物種が激減した。一方で、増加する休耕田がそれら植物種の避難地として機能している可能性が指摘されている。本研究では、水田地帯を代表する景観要素である慣行田と休耕田において, 植物種組成とそれを規定する要因を明らかにし、現存する植物種の保全方法について議論する。

氾濫原湿地を干拓して造成された越後平野の水田地帯(500km2)を対象に, 各68枚の慣行田と休耕田において、連続する20個の1m x 1mの植生調査枠を設け、出現した維管束植物の種名を記録した。各調査田は立地(三角州・後背湿地・海岸低地)と干拓履歴によって分類された。さらに、休耕田では管理形態(休耕年数・除草剤使用の有無)を聞き取り、土壌水分を測定した。

調査田あたりの出現種数を応答変数、耕作の有無(慣行田・休耕田)、立地、干拓履歴を説明変数、地域をランダム要因としてGLMMで解析し、以下の結果を得た: (1)水田を主な生息地とする希少植物の種数は三角州や後背湿地の調査田で増加し、休耕田より慣行田で増加; (2)かつての氾濫原由来だと考えられる植物の種数は後背湿地で増加し、慣行田より休耕田で増加; (3)外来植物の種数は休耕田で増加。次に、説明変数に管理形態と土壌水分を加えて、各要因が休耕田あたりの出現種数に与える影響を同様に解析し、以下の結果を得た: (1)除草剤散布は希少植物種数に正に、(2)氾濫原由来の植物種数に負に影響; (3) 外来種数は海岸低地の休耕田で増加し、除草剤散布から負の影響を受ける。以上より、水田地帯における植物種の保全には、土地の地史的背景を考慮し、人為攪乱の内容を保全の対象によって変えることが必要であると結論付けた。


日本生態学会