| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) H1-09

マイマイカブリにみられる形態的多様化

*小沼順二,長太伸章,曽田貞滋(京大・理)

集団の資源利用が特定の資源へと特化する過程は「生態的特殊化」とよばれ、適応進化の普遍的な傾向と考えられている。生態的特殊化は同一資源を利用する種間の形態分化を導く一方で、種内多型を維持させる分断選択を発生させ同所的種分化を導き得る。生態的特殊化は群集内の形態的多様性や種多様性を急激に増加させる一般的なプロセスであり、どのような条件下において特殊化が生じ得るかを理解することは、適応放散の解明に不可欠といえる。

本研究では特殊化が生じ得る条件を解明するため、北半球に分布する貝食性オサムシの形態分化機構に着目した。貝食性オサムシでは「巨頭型・狭頭型」とよばれる形態的2型が広く一般的にみられる。巨頭型とは頭部と胸部が著しく肥大化したオサムシを示し、狭頭型とはそれらが極端に細長く伸長したオサムシを示す。面白いことに、このような形態的2型は貝食性オサムシの祖先種にあたるミミズ食や昆虫幼虫食のオサムシではみられない。「巨頭型は大顎で巻貝の殻を壊して食べることができるが、殻に頭を入れる上ではその頭部が大きすぎる。一方、狭頭型は頭を殻に入れて、直接、巻貝の軟体部を捕食できるが、殻を壊して食べるだけの十分な破壊力をもたない。」我々は、このようなトレードオフが巻貝食へと特殊化する過程においてオサムシの形態分化を導いたのではないかという仮説を立てた。

材料として日本に広く分布するマイマイカブリに焦点をあて実験を行った。北海道から鹿児島まで57地点、約1700個体のマイマイカブリ標本の形態解析を行うと同時に、それぞれの地点での主要な餌となり得るカタツムリの形態情報を調べた。結果は、上記した仮説を支持する傾向を示した。

本研究は、生態的特殊化においてトレードオフが必要不可欠なメカニズムであることを示す重要な証拠といえる。


日本生態学会