| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) H2-08

侵入直後のオオクチバスが 短期間のうちに溜め池の生物群集に及ぼした影響

*藤本泰文,進東健太郎(伊豆沼財団),星 美幸,神宮字 寛(宮城大・食)

定期的に調査を行なっていた宮城県北部の溜め池にオオクチバス Micropterus salmoides が侵入した.すぐに捕獲作業を行ない,82個体のオオクチバスを捕獲した.環境調査の記録から,オオクチバスが侵入して13日が経過した段階で捕獲したと考えた.胃内容物を調査した結果,オオクチバスは1個体あたり3.0個体の水生生物を捕食していた.溜め池に生息する水生生物の個体数推定を行ない,オオクチバスによる水生生物に対する捕食数と捕食率を算出した.その結果,オオクチバスは溜め池に生息した13日間で,溜め池に生息する約9,000個体の水生生物のうち,タナゴ1,687個体,トウヨシノボリ400個体,エビ類718個体,アメリカザリガニ267個体を捕食したと推定された.これは生息個体数のそれぞれ37.9%, 31.0%, 35.0%, 21.2%に相当する.侵入初期のオオクチバスによる水生生物への影響を報告した事例はこれまでになく,本研究の結果は,オオクチバスが水生生物を大量に捕食する性質を持ち,今回のように生息する水生生物の約1%に相当する個体数が侵入した場合においても,強い捕食圧を与え,その水域の水生生物を急減させることを示した.


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