| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) I1-07

生息場所が親の行動を変える:オオミズナギドリ3繁殖集団の比較

*岡 奈理子(山階鳥研),越智大介,松本 経,綿貫 豊(北大),佐藤克文(東大),出口智広(山階鳥研), 白井正樹,山本麻希(長岡技大)

ミズナギドリ目鳥類の親は子育て期に長距離トリップをすることが幾つかの種で知られる。これは、ヒナへの給餌で低下した親自身の栄養回復に寄与するが、移動にかけるコストの増大、長びく留守がヒナの生育を制約すると予想されるため、親がどこで繁殖するかは、親子双方の適応度に大きな影響を与え、繁殖個体群規模に影響するだろう。

生息場所が子育て期の親の行動とヒナの生育に与える影響を評価するために、海洋環境が異なる3つの繁殖島(伊豆諸島御蔵島、三陸沿岸の三貫島、新潟県粟島)で、子育て期の親の索餌行動と、ヒナの成長に関するパラメターを比較した。これによって、近年、北部繁殖エリアで顕在化した繁殖個体群の増減現象を説明することを目的とした。

3島の親の採食行動圏はいずれも広く、長距離トリップ(島から500km以遠)では、北海道の南〜南東沖の、親潮と黒潮の混合域が最終目的地であった。島から最終目的地までの平均直線距離は、御蔵島の親で最も長く1,200km、粟島の親で750km、三貫島の親では、御蔵の半分以下の550kmであった。御蔵の親は長距離トリップに平均約75%、短距離トリップ(島から250km以内)に平均25%の日数をあてたのに対して、他の2島の親では平均約60%の日数を短距離トリップに費やし、結果として、島周辺海域での滞在割合を高めた。親の体重は御蔵<粟島<三貫島となり、ヒナの成長速度は御蔵が遅く、粟島と三貫島のヒナでは早かった。主要採食場を混合域としたオオミズナギドリでは、島から混合域までの距離が、親・ヒナ双方の適応度に影響しており、近年の繁殖集団の規模の変化に起因していると考えられた。


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