| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) J2-07

コルリクワガタ種群の種の分布境界域の状態

*久保田耕平(東大・農),久保田典子(横浜市)

日本産ルリクワガタ属は本州、四国、九州の主として冷温帯広葉樹林に生息し、ブナに代表される自然のよく残された環境に多いグループである。著者らはKubota et al. (2008)において、それまでPlatycerus acuticollis 1種とされてきたコルリクワガタ種群を、主として雄交尾器内袋の形態から4種に分離記載し、大局的に見ると各種どうしがほぼ側所的に分布することを報告した。また、その後の調査で分布境界域におけるコルリクワガタとユキグニコルリクワガタの混棲地を発見した(久保田他、2009)が、境界域の分布についてはまだよくわかっていなかった。

さらに2008-2009年にかけて各種の境界域を探索したところ、ニシコルリクワガタとトウカイコルリクワガタ、およびユキグニコルリクワガタとトウカイコルリクワガタの組み合わせについても、最短の生息地間の距離を10km-数十km程度まで短縮することができた。いずれの場合も移行的な形質は認められず、種間の形質差は歴然としており、さらなる中間域の探索が求められる。また、コルリクワガタとユキグニコルリクワガタの混棲地付近を精査したところ、両者はほとんど完全に入れ替わっており、ごく一部で混棲が認められるにすぎないことがわかった。これまでに明らかな種間雑種と考えられる個体は発見されていない。本講演では、これら種間境界付近での形質状態、分布状態の詳細について報告する。


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