| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-008

琵琶湖湖岸および流入河川における外来植物群落の比較生態

*村上雄秀(IGES国際生態学センター),西川博章(株式会社 ラーゴ)

日本の河川や湖沼の水辺植生の外来植物化は急速に進んでおり,既に都市河川では1980年代で河辺植生の主体は外来種に移行した(村上, 1986,1989など).琵琶湖においても2007年の湖岸植生の調査ではスズメノヒエ類,コマツヨイグサなどの外来植物が急増し,ナガエツルノゲイトウなど特定外来生物種7種の定着が確認されている(未発表資料).

湖岸への外来種の侵入経路として流入河川からの種子供給が想定される.本研究は流入河川から湖岸への外来種の侵入を評価する目的で,湖岸および流入河川の外来種群落の類型および構成種,生育立地について比較し,種子散布を調査した.2008〜2009年に湖東地区を対象として170地点の植生調査,10地点の地形断面調査を実施した.

1.外来種群落として湖岸においてコマツヨイグサ群落など30群落,河岸においてカラシナ群落など20群落を認めた.特定外来種の優占群落は4群落,要注意外来種の優占群落は9群落が含まれた.

2.河岸で確認された外来1年草群落・外来木本群落はすべて湖岸にも出現した.外来多年草群落のみに河岸特有の群落を認めた.撹乱条件を指標する外来1年草群落の外来植物群落中での比率は河岸で約1/3(7群落),湖岸で約1/2(17群落)で差がみられた.

3.地形断面の調査により主たる撹乱条件は湖岸では波浪とそれに起因する砂の移動,河岸では季節的な水位の変動と土壌流亡と推定された.外来種群落の河岸および湖岸での共通性は,これら撹乱条件の差が大きな障害となっていない点,流入河川からの恒常的な種子供給が要因と推定された.

4.顕著な季観を呈する外来種である春季のカラシナおよび秋季のノゲイトウは種子の水散布だけでなく,結実した成熟個体全体の流出・漂着による散布が観察された.これは湖岸への安定的な種子供給を可能にする散布様式と推定した.


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