| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-049

暖温帯里山二次林にみられる多様な林分構造

*岡田知也, 中川弥智子(名大院・生命農), 西村尚之(名産大), 松下通也, 戸丸信弘(名大院・生命農)

ある地域全体の種多様性(γ多様性)は局所群集内(α多様性)と局所群集間(β多様性)の成分によって説明される。里山二次林には,人為的な撹乱や立地微環境の影響によって多様な森林タイプが含まれており,森林タイプ間の種組成の違いが種多様性に重要な役割を果たしていると考えられる。本研究では,二次林がどのような森林タイプで構成されているのか,γ多様性に対して各成分がそれぞれどの程度貢献しているかを明らかにするために,愛知県瀬戸市に位置する暖温帯里山二次林,海上の森において10個(0.09-0.25ha)のプロットを設置し,胸高直径(DBH)≧5cmを上層木,DBH≧1cmかつ<5cmを下層木として,毎木調査を行った。TWINSPAN解析を用いた種組成に基づくプロットの分類の結果,上層下層ともに落葉樹の優占する群集,上層は落葉広葉樹で下層に常緑広葉樹の優占する群集,アカマツなどの先駆種の優占する群集の3つの群集タイプ(それぞれ4,2,4プロット)に分類された。Shannonの指数により種の均等性に関してブートストラップ試行による95%信頼区間を算出し,プロット間で比較したところ,上層には差はみられなかったが,下層ではアカマツなどの先駆種の優占する群集の種多様性が他群集と比較して有意に高かった。多様性の各成分の貢献度を明らかにするため,種数に関してプロット内の10m×10mグリッド内(α1)・グリッド間(β1)・各プロット間(β2)の3つに多様性の成分を分割してそれぞれの値を比較した結果,γ多様性の大部分がβ2によって説明された。以上より,海上の森には多様な森林タイプが存在し,それらの間の種組成や森林構造の違いが地域全体での種多様性の決定に寄与していることが明らかとなった。


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