| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-061

クローナル植物におけるエピジェネティック変異

*荒木希和子,工藤洋(京大・生態研)

ゲノム上の塩基配列の変化を伴わないエピジェネティックな変異は、細胞分化や個体発生の過程での遺伝子発現を制御するのに重要な機構として知られている。近年モデル生物や農作物においては、詳細なメカニズムが解明されるとともに変異量や変化パターンが調べられている。DNAのメチル化修飾はエピジェネティックな機構の一つであり、環境条件や成長過程に伴って変化する一方で、細胞分裂後も安定に維持・継承される場合もあることが知られている。さらに植物の場合は、メチル化の対象となる塩基配列により、メチル化の確立や維持機構が異なることも明らかとなってきた。

クローナル植物は、栄養器官からのクローン成長により新たな植物体(ラメット)を生産し、遺伝的個体であるジェネットは複数の独立したラメットから構成される。同時に、ジェネットは広範囲に広がるため、野外の複雑な環境の下では、単一の個体が生育地の不均一な環境に遭遇すると考えられる。このような植物では、生育地の微小な環境変化への適応において、ジェネティックな変異に加えエピジェネテッィクな変異が重要な役割を果たしている可能性が高い。しかしながら、野生植物におけるDNAメチル化の程度や空間分布は調べられていない。

そこで本研究では、DNAシトシン塩基へのメチル基修飾パターンの違いを認識する二種類の制限酵素を用いたAFLP法(methylation-sensitive amplified polymorphism)によりDNAメチル化解析を行った。地下茎によりクローン成長を行うコンロンソウ(Cardamine leucantha)を対象に、ラメット内,ラメット間,ジェネット間でのメチル化を定量し、各サイトの変異率を調べた。さらに、検出された領域の多型性から、これらの役割について考察した。


日本生態学会