| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-064

十勝平野分断林の木本種の分布に対する林縁効果と面積効果:多方向の林縁を考慮した解析

*鈴木智之(首都大・理工),富松裕(東北大・農),大石善子,紺野康夫(帯広畜産大・畜産)

森林の分断化が植物個体群に及ぼす影響には、森林の連続性の減少の効果(面積効果)と林縁部における急激な環境変化による効果(林縁効果)がある。森林面積が小さい程林縁部の割合が多くなるため、これまで面積効果は林縁効果を含めて評価されることが多かった。さらに、小さな林分ほど多方向からの林縁の効果を強く受けることが、面積効果と林縁効果の区別を困難にしていた。本研究では、十勝平野の木本種の分布に対する分断化の影響を、多方向からの林縁を考慮し、林縁効果と面積効果を明確に区別して評価した。

1999年に行われた帯広近郊の落葉樹林の分断林13 林分(0.3-8 ha)の毎木調査のデータを解析に用いた。各林分の全域が5 x 5 m の区画に区切られ、出現した全木本個体(約21万個体)の種(84種)とサイズクラス、出現区画が記録されている。出現頻度の高かった低木種ハシドイについて、各区画の出現個体数を従属変数とするモデルを構築し、ベイズ推定した。独立変数として面積効果のみのモデル(NM)、面積効果と最近接林縁のみを考慮したモデル(SM)、面積効果と多方向からの林縁を考慮したモデル(MM)を比較した。

NMでは正の面積効果があった。SMでは負の林縁効果があったが、面積効果はほとんどなかった。MMでは負の林縁効果と若干の負の面積効果があった。これらの結果は、ハシドイは小さな林分で密度が低いが、それは林縁部で密度が減少していることによるものであることを示唆する。さらに、林縁効果の考慮の仕方によって、推定される面積効果の符号や大きさも大きく変わるうることが示された。

今後、複数の種、異なるサイズクラスについても解析を行なっていくことで、林縁効果と面積効果がそれぞれ群集構造全体に及ぼす影響を解明していく。


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