| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-066

イタドリの地上茎および地下茎からの栄養繁殖能力の定量的評価〜移入先と自然分布域での比較

角田智詞,可知直毅,*鈴木準一郎(首都大・理工・生命)

自生地では侵略的ではない種が、移入先で爆発的に増殖し侵略的外来種となるとの報告は多く、移入先での天敵の不在が原因の一つとして指摘されている。1855年に英国に持ち込まれた一株のイタドリは、栄養繁殖により全土に広がり、現地では最も深刻な外来種とされており、地上茎・地下茎の断片からの栄養繁殖能力の定量的な報告も多い。一方で、自生地である日本のイタドリについての報告は、著者らの知る限り出版されていない。そこで、本研究は、多摩川河川敷に分布するイタドリを用いて、地上茎・地下茎の断片の栄養繁殖能力を、先行研究の手法に則って定量的に評価した。

採集した地上茎および地下茎を持ち帰り、不織布製のポットに川砂および本学圃場の畑地土壌を入れ、5cmおよび25cmの深さに植え込んだ。また、ベンレート(住友化学)により殺菌した処理も設けた。21日間の栽培後、刈り取り、栄養繁殖した地上茎と葉の数等を測定した。

地上茎からの栄養繁殖の有無および再生した地上茎の数に対し、培養土の種類、埋設の深さ、殺菌処理の有無を要因とするモデル選択を行なったところ、殺菌処理の有無のみを含むモデルが選ばれ、殺菌処理を施した場合に、再生率は向上した。地下茎では殺菌処理による顕著な差は無かったが、地上茎からの栄養繁殖には、菌類等による負の影響がみられることが示唆された。しかし、再生率自体は、殺菌処理を施さない場合でも70~90%と英国での報告に比べ顕著に高かった。

以上より、少なくとも自生地の一部の個体に比べ、移入地でのイタドリの栄養繁殖能力は低いと考えられる。英国では、イタドリに著しく影響する菌類の存在は報告されておらず、この栄養繁殖能力の低下は、イタドリの内的要因に起因すると考えられ、長期にわたり栄養繁殖のみで増殖した結果かもしれない。


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