| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-071

白山の高山帯に移植されたコマクサ(Dicentra peregrina (Rudolphi) Makino)の個体数の増加

*野上達也(石川県白山自然保護センター),吉本敦子(石川県白山自然保護センター),稲葉弘之(アルスコンサルタンツ(株)),瀬川 涼(環境省),畑中康郎(聖心学園中等教育学校),米山競一(石川県地域植物研究会)

コマクサ(Dicentra peregrine (Rudolphi) Makino)(ケシ科)は,東シベリア,カムチャッカ,千島列島などに分布するほか,日本では北海道(知床半島,大雪山系など),本州(岩手山,秋田駒ヶ岳,蔵王山,八ヶ岳,北アルプスなど)に分布しているとされるが,白山(標高2,702m)では分布していないとされている.しかしながら,実際には白山でもコマクサの生育は確認されており,それらは自生のものではなく,1973年ごろに金沢市の山岳愛好家のグループが植栽したものが繁殖,増殖した結果であると考えられている.白山国立公園は石川,岐阜,福井,富山の4県にまたがる自然公園で,白山山頂部は特に規制の厳しい特別保護地区に指定されている.しかしながら,当時の自然公園法には木竹以外の植物の植栽に関しての規制がなかったためコマクサの植栽にも規制ができなかったらしい.

これまでの現地調査の結果,コマクサは白山国立公園特別保護地区内で5か所程度確認されている.そのうち最も個体数が多く生育範囲も広いカンクラ雪渓上部のコマクサの個体群について1993年,2001年,2009年に個体数調査を実施した.その結果,1993年には開花,非開花株あわせて103個体だったものが,2001年には開花,非開花株あわせて1,780株(1993年比17.3倍),2009年には開花,非開花株あわせて4,929株(1993年比47.9倍)と大幅に増加した事が明らかになった.また,2001年には146個体,2009年には132個体の実生が確認され,植栽された株から種子繁殖によって個体数を増加させていると考えられた.


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