| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-079

生育地の地形がオキナワウラジロガシ集団の遺伝構造におよぼす影響

*川路まり(鹿大院・農), 兼子伸吾(京大院・農), 舘野隆之輔(鹿大・農),井鷺裕司(京大院・農), 米田健(鹿大・農)

植物の生育地の地形は、個体分布様式、個体密度、送受粉、種子散布などに影響を与え、集団の遺伝構造に影響を与えると考えられる。しかし、谷の形態などわずかな地形の違いが遺伝構造にどのような影響をおよぼすかを評価した事例は少ない。琉球列島にはオキナワウラジロガシ(Quercus miyagii)などが優占する発達した亜熱帯性広葉樹林がひろがっている。オキナワウラジロガシは谷部や平坦な斜面に集中して分布する特性があり、生育する谷の形態によって異なる遺伝構造が形成されることが予想される。そこで本研究では生育地の地形が遺伝構造におよぼす影響を評価することを目的に、生育地の地形形態の異なるオキナワウラジロガシ集団において、遺伝構造の解析と地形評価を行った。

調査は鹿児島県大島郡徳之島で行った。オキナワウラジロガシが生育する6集団を選定し、DBH30cm以上の個体の位置と胸高直径を記録した。各集団20個体以上から生葉を採集し、マイクロサテライトマーカー6遺伝子座の遺伝子型をもとに個体間距離と遺伝的近縁度の関係から遺伝構造を評価した。またGISを用いて、谷の形状、傾斜・凹凸度・斜面方位などの生育地の地形特性の評価を行った。

遺伝解析と地形評価の結果、傾斜が緩やかな地形に生育する集団では空間的距離が近い個体間において近交係数が有意に高かったが、傾斜が急な地形に生育する集団においてはそのような傾向はみられなかった。このことから、生育地の地形の違いが花粉の移動や種子散布、個体の生残、個体密度等に影響をおよぼし、その結果として遺伝構造に影響をおよぼしていると考えられる。


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