| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-116

乾燥に対する樹木の水分通導性の変化〜環孔材は散孔材よりも通水に有利なのか?〜

*小笠 真由美, 三木 直子, 廣部 宗, 坂本 圭児, 吉川 賢

環孔材と散孔材の乾燥ストレス下での通水特性を明らかにするため、環孔材のケヤキ、センダン、コナラ、散孔材のイヌシデ、ヤマザクラ、シラカンバの苗木を対象に、潅水を停止することで各樹木に乾燥ストレスを与え、乾燥の進行(木部の水ポテンシャルΨxylemの低下)に伴う幹の水分通導度(Ks)の低下の程度を求めた。また、乾燥ストレスを与える前(Ψxylem>-1.0MPa)と後(Ψxylem<-3.0MPa)において、機能している道管が水分通導度にどの程度貢献しているのかを評価するため、その道管の直径に加え、直径の4乗値も求めた。

乾燥ストレスを与える前、樹種によらずKsは散孔材樹種よりも環孔材樹種で2〜5倍高い値を示した。Ψxylemの低下により全ての樹種でKsは低下したが、一貫して環孔材樹種の方が高い値を示した。通水機能を維持していた道管の本数密度は、乾燥ストレスを受ける前と同様に散孔材樹種の方が大きかった。しかし、機能している道管の最大直径は環孔材樹種の方が大きく、直径の4乗値の合計も著しく大きかった。散孔材のシラカンバは、乾燥により比較的大径の道管で閉塞する傾向を示したが、それ以外の全樹種では乾燥による道管の閉塞の程度と直径の間に明確な関係は見られなかった。以上より、乾燥ストレス下では、散孔材樹種は、乾燥ストレスを受けた後も機能する道管を多数有することでKsを安定的に維持し、環孔材樹種は、一部の大径道管が閉塞せず通水できることで木部のKsを高く維持することから、樹幹部分では環孔材樹種が通水に有利であると考えられた。では、樹幹の通水効率が高いと個体レベルでの水輸送にも有利なのか?本発表では、木部構造由来の樹幹の通水特性の評価に加え、気孔応答の違いや乾燥状態の解除後の水分通導度の回復能力も視野に入れ、材の管孔性を反映した個体レベルの水輸送特性について考察する。


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