| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-121

茎への重量負荷は茎の成長に影響するか?

*長嶋寿江,彦坂幸毅(東北大・院・生命科学)

植物の茎には、葉を空間的に配置し受光を助ける役割がある。その役割を果たすためには茎は力学的に安全に葉を支える必要がある。もし茎が細すぎたり長すぎたりすれば、葉の重量を支えられず変形してしまい、効率的な受光が行えない。草本植物では、隣接個体による被陰に反応して茎の伸長速度が変わることが知られているが、葉重に反応して植物の成長は変わるのだろうか。さらに、隣接個体が存在するとその反応は異なるのだろうか。

孤立条件(4個体m-2)と群落条件(100個体m-2)にてオオオナモミを生育させ、各葉の葉柄に10g(個葉生重の約5倍)の重りを付け、3週間後に刈り取り調査を行った。また引き続き重りを追加し繁殖量も調べた。

重り負荷によって、茎の肥大成長はどちらの個体密度条件でもわずかに増大し、茎の伸長成長は孤立条件では変わらなかったが群落条件では低下した。このように、力学的安定性を増すように茎の成長は変化したが、重り重量も考慮して算出した座屈安全率(=座屈が生じる限界の高さ/実際の高さ)は、重り負荷によって孤立条件では5.7から4.1へ、群落条件では1.8から1.5へと低下した。つまり、重り負荷による茎の成長の変化は、重り重量による力学的安定性の低下の補償には不十分だった。根・茎・葉へのバイオマス分配は、どちらの個体密度条件でも重り負荷にほとんど影響されなかった。繁殖量は、孤立個体では重り負荷の影響は見られず、重り負荷への反応にはほとんど繁殖量のコストがかからないことが明らかになった。群落個体では重り負荷によって繁殖量が低下したが、群落個体では繁殖直前に重りによって茎が曲がったため、それによる受光量低下のために繁殖量が低下したと考えられた。隣接個体への反応が生じることで重り負荷への反応が抑制されることはなく、むしろ伸長量ではより強い反応が見られた。


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