| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-131

都市生態系における植物の光合成と炭素安定同位体比

*半場祐子,籠谷優一,藤野貢祐,牛島広貴,風間貴仁(京都工繊大)

京都議定書や気候変動枠組条約締約国会議では、温室効果ガスの吸収源として都市緑地が位置づけられており、日本では1990年比6%の二酸化炭素削減目標に対して0.33%を都市緑地による二酸化炭素吸収効果に期待している(市村 2006)。既存の緑地の二酸化炭素吸収能力を高めることは、都市緑地による二酸化炭素吸収量の増加を成功させる鍵となると考えられる。都市緑地の中でも「街路樹」は二酸化炭素量が特に多い道路に近接して植栽されていることから、都市域における二酸化炭素の効率の良い吸収源として期待できる。しかし、街路樹は生育空間が制約されており、土壌が悪化しやすいなどの要因により不健全化が起こりやすい(小林ら 2006)。加えて、街路樹は自然植生とは異なり、都市特有の「都市気候」の影響下にあり、さらにストレスがかかりやすい。近年の夏期における気温の上昇は、単木である街路樹にとりわけ強い乾燥ストレスを与える要因となっていると予想され、街路樹の二酸化炭素吸収機能を妨げる大きな要因となると考えられる。本発表では、都市環境にある街路樹について2007-2009年度に京都市内および滋賀県大津市内において、市内中心部と郊外とで調査を行い、主に夏期における葉の光合成機能と乾燥ストレスとを比較した結果を報告する。葉の乾燥ストレスの推定は、炭素安定同位体比を測定することにより行ない、サンプリング地点の微環境はデータロガー等で計測を行なった。その結果、市内中心部は郊外と比較すると土壌・大気ともに乾燥しており、市内中心部の街路樹はより強い乾燥ストレスを受けて光合成速度も低くなっていることが分かった。一方、夏期に街路樹に対して適切な潅水を行なえば光合成速度が大幅に上昇することが分かり、適切な管理が街路樹の二酸化炭素吸収機能を大きく高める可能性があることが明らかになった。


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