| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-157

Populus属の耐塩性とベタイン類の役割

*道又静香,毛恵平,岡田憲和,山中典和,山本福壽(鳥取大・農)

グリシンベタイン(GB)は植物が環境ストレス下に置かれると適合溶質の一種として合成され、細胞内の恒常性を維持するといわれている。またGBを添加することによって耐塩性を獲得するという報告もなされているが、植物に与えるグリシンベタインの濃度や方法、さらに植物の種類や発達段階、環境によっても反応が異なるため、実際にどのような役割があるのかほとんどわかっていない。そこでGBを外部から添加することによる植物の反応を検討した。実験にはこれまでの研究から100mMのNaClに耐えうるとされる Populus albaの挿し木2年生苗木を用い、水耕栽培で生育させた。基本培地に0,100mMのNaClを加えた処理区を用意し、それぞれの処理区にGBを(1)培地から根に0,15,30,60mMを吸収させた処理区、(2)葉に0,50,100mMを散布した処理区を設置した。実験終了後の成長量と実験中に測定した光合成速度の結果で、対照区と比較してすべての処理区に抑制傾向が見られ、特にNaCl100-GB0区では有意な値の低下が認められた。しかし、NaCl100-GB100区において成長量は塩ストレスのみの処理区と同程度、光合成速度は対照区と同程度の値を維持した。さらに根と葉のナトリウムイオン含有量の結果から、NaCl100-GB100区のみで葉よりも根に多くのナトリウムイオンを蓄積した。以上の結果から、NaCl100-GB100区ではナトリウムイオンの輸送を抑制し、根に蓄積することによって落葉を抑制する傾向がみられた。さらに、根からの吸収と比較して葉面散布ではGBによる成長不良は起こらず、光合成速度の有意な低下も認められなかった。P. albaにおいて、本実験の処理では根からのGB吸収よりも葉面散布による葉からの吸収の方が効果的に耐塩性を向上させることが示唆された。


日本生態学会