| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-162

マレーシア熱帯山地林における樹木の生育土壌環境と個葉特性

*塩寺さとみ(北海道大学), 北山兼弘(京都大学農学研究科)

マレーシア・キナバル山国立公園内には、成立年代や栄養状態の異なる土壌がパッチ状に存在しており、その土壌を基盤として成立している森林についても、群集構造や生産性、森林を構成している樹木の形態学的特性などに顕著な違いが見られる。蛇紋岩地(P欠乏土壌)の植物は日常的に強い栄養塩欠乏のストレスを受けていると考えられ、堆積岩地の植物に比べて成長が悪く、森林全体のバイオマスも低い。また、蛇紋岩地(P欠乏土壌)と堆積岩地とでは樹種組成が異なっており、共通して生育している種はまれである。蛇紋岩地(P欠乏土壌)の植物は、乏しい栄養塩状態に適応できるような特徴を持っていると考えられる。

本研究では、これらの栄養塩状態の異なる土壌に生育している木本種について、葉の特性や、光合成における栄養塩・水利用効率についての比較を行った。蛇紋岩地(P欠乏土壌)に生育している種は、堆積岩地のものに比べて個葉面積が小さく厚い葉をもつ傾向がみられた。光合成における窒素利用効率は、堆積岩地の樹木で高い傾向が見られたが、水利用効率は蛇紋岩地(P欠乏土壌)、堆積岩地で違いは見られなかった。一方、光合成における窒素利用効率と水利用効率との関係性を比較すると、堆積岩地では、窒素利用効率の高い種では水利用効率が低く、窒素利用効率の低い種では水利用効率が高くなるというトレードオフの関係が見られたが、蛇紋岩地(P欠乏土壌)に生育している樹木においてはそのような傾向は見られなかった。これらの結果から、キナバル山においては、蛇紋岩地(P欠乏土壌)のように栄養塩が欠乏している生育環境では、光合成特性や個葉の形質が収斂するのに対して、堆積岩地では、資源利用の方法においてはより多様な特性を示す種が生育しているということが示唆された。


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