| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-209

無融合生殖を行う雑種性タンポポにおける遺伝的多様性が増大する仕組み

*満行 知花(九大・理・生物), 矢原 徹一(九大・理・生物), 芝池 博幸(農環研・生物多様性), 保谷彰彦(東大・(院)広域システム)

現在日本では、外来種であるセイヨウタンポポと在来のニホンタンポポの間の雑種が広く分布している。セイヨウタンポポ、雑種は倍数体で、無性的に種子を形成する。さらに、セイヨウタンポポと3倍体雑種はまれに稔性のある花粉を付ける。野外の雑種タンポポを対象としたアロザイム、マイクロサテライト解析の研究では、雑種は無融合生殖を行うにもかかわらず遺伝的変異性があり、特に3倍体では高い遺伝的変異性を持つ事が明らかになっている。この遺伝的変異性を生み出すメカニズムとして、野外では雑種とニホンタンポポの間で戻し交配が起こっている可能性が考えられる。戻し交配が起こると、有性生殖(分離、組み換え)によって遺伝的に多様な子孫が生じる事が期待される。

しかし、野外で戻し交配が起こっているか、そして戻し交配雑種は遺伝的変異性を持つか、についての検証は不十分である。そのため、本研究では、まず野外に生育している在来タンポポが付けた種子に、戻し交配雑種が含まれるかを形態的特徴、核型解析によって調べた。次に、人工交配による戻し交配雑種とその両親のマイクロサテライト解析で、両親からどのような数と組み合わせでアリルを受け継ぐのかについて調べた。

その結果、304個体中1個体、戻し交配雑種である可能性が高い個体が出現した。また、マイクロサテライト解析から、セイヨウタンポポとニホンタンポポ間の染色体の対合、組み換えが起こっている証拠は得られなかったが、分離によって両親が同じ戻し交配雑種であっても遺伝的に多様になっていた。そのため、低い頻度で起こる戻し交配によって、遺伝的な変異性が増大した可能性が示唆された。


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