| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-210

同所的林床に生育するイワガラミ・ツルアジサイの分布と光環境

*森戸寛(岐阜大院・応用生物),加藤正吾,小見山章(岐阜大・応用生物)

付着根型つる植物であるイワガラミとツルアジサイは林内などの暗い場所においては、林床を這って生活しているが、樹木や岩などのホストに辿りつくと、ホストを登攀し、垂直方向へ分布を広げる。2種は、登攀する際にはホストとなる樹木や岩などの同一資源を利用すると考えられるが、同一ホスト上に2種が登攀していることは多くない。林床での生育段階において、2種はどのように分布し、そしてホストを探索し、辿りつくのか。本研究では登攀にともなってホストという同一の環境を利用するつる植物2種において、林床に生育する間の利用環境においても同一性がみられるかどうかを検討した。

本研究ではトドマツ人工林(標高1100m)の林床に斜面を横断するように0.45m×18m(8.1 m2)の調査プロットを設置した。調査プロットにおいて2種の林床における分布を詳細に調査した。また林床の光環境と土壌水分環境について調査し、2種の分布との関係を調べた。イワガラミは調査プロット内に広く分布し、ツルアジサイは偏って分布していた。2種の分布と土壌水分環境を比較した結果、土壌水分環境は2種の分布には影響していなかった。調査プロットの光環境は、林冠に疎な部分があり、不均一性が生じていた。2種の分布と光環境を比較した結果、イワガラミは調査プロット内の光環境に対してランダムに分布し、ツルアジサイは調査プロット内の明るい場所に集中して分布していることがわかった。

以上の結果より、イワガラミとツルアジサイには林床で生育できる光環境に違いがあることが明らかになった。このことから、イワガラミは広範囲の光環境下のホストを利用できる可能性があるのに対し、ツルアジサイはイワガラミに比べて明るい環境下にあるホストを利用する可能性が示唆された。


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