| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-229

熱帯と温帯におけるアカメガシワ属の送粉生態

*山崎絵理(生態研),酒井章子(地球研)

アカメガシワ属(Mallotus)は、熱帯から温帯にかけて分布するトウダイグサ科の雌雄異株の木本植物である。アカメガシワ属は約110種が知られているが、いずれも花弁を持たない黄色い花を咲かせる。花に昆虫を誘引する特徴が見られないことと、雌花に訪花昆虫が見られた例がほとんどないことが理由で、アカメガシワ属は風媒であると思われてきた。しかし実際には、アカメガシワ属の送粉様式はほとんど研究されてこなかった。

本研究では、アカメガシワ属のうち、温帯に分布する種と熱帯に分布する種を1種ずつ選び、それぞれ送粉様式を調査した。温帯の種はアカメガシワ(Mallotus japonicus)、熱帯の種はMallotus wrayiで、それぞれ滋賀県とボルネオ島サラワク州で調査を行った。

M. japonicusの1年目の研究では、この種が風媒と虫媒両方の性質をもつことが明らかになった。調査方法として、主に(1)花序に網をかけ昆虫を排除し、風媒のみによる結実率を調べる (2)訪花昆虫を捕獲して体表に付着した花粉粒の有無を観察し、送粉者として有用であるか調べる (3)空気中を飛散する花粉の量を調べる という手法を用いた。2年目は、雄株と雌株の距離や密度を考慮して同様の調査を行い、風媒と虫媒の寄与度に違いがあるのかどうか調べた。この結果、虫媒は雌雄間の距離に関係なく結実に寄与しているのに対し、風媒は雌雄間の距離が大きいと、結実への寄与が小さくなるということが示唆された。

M. wrayiについても、(1)〜(3)の手法で調査を行った。この種では網かけを行った花序でほとんど結実せず、雌株付近では空気中の花粉数も僅かであったため、風による送粉はほとんど行われず、昆虫による送粉が重要であると示唆された。

さらに、これら送粉様式の異なる2種を、温帯と熱帯という環境の違いや送粉と関連する形質の違いから比較する。


日本生態学会