| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-233

ミズキの結実期個体差が果実食鳥類の訪問頻度に与える影響

*山崎 良啓(京大院・農), 藤津 亜季子(農工大・農), 直江 将司(京大・生態研), 正木 隆(森林総研), 井鷺 裕司(京大院・農)

日本に広く分布する高木液果のミズキは、結実期間が8月から10月までと長いが、個体ごとに結実期が異なり8月にほとんどの果実を落下させてしまう個体がある一方で、10月まで果実を樹上に残しているものもある。また、ミズキの種子散布者である果実食鳥類の種組成や個体数は、渡りにより夏から冬にかけて大きく変化する。その結果、ミズキは個体により種子散布される季節や種子散布者が異なることが考えられる。本研究では、このような季節による違いを反映したミズキ個体と果実食鳥類の関係を明らかにすることを目的とした。

調査は、小川保護林(茨城県北茨城市)に設定した240 m×340 mの調査区で行った。2009年の結実期間を通して、ミズキ結実木に訪れる鳥類の観察を行った(9個体、計167時間)。また、双眼鏡による樹上果実カウント(全結実個体75個体)とシードトラップによる果実回収(9個体)を2週間おきにおこなうことで結実量を推定し、個体ごとの結実フェノロジーを評価した。

訪問鳥類の観察により、15種335羽の鳥類の訪問を観察した。結実期初期はヒヨドリ・アカゲラ属・メジロが主な散布者で果実落下時期の早いミズキ個体に訪れていた。結実期終期は、クロツグミ・メジロ・アオバト・サメビタキ属が主な散布者で果実落下の遅いミズキ個体に訪れていた。また、鳥の訪問確率を説明する変数として、半径20m内の結実減少量・観察季節・観察時刻が選択された。以上の結果より、異なる結実期をもつミズキ個体は異なる種子散布者に依存していることが明らかになった。


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