| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-244

北海道北部の湿原泥炭層における微生物群集構造解析

*秋山 克, 清水 了, 石島洋二(幌延地圏環境研究所),長沼 毅(広島大・生物圏科学)

北海道北部に位置するサロベツ湿原(以下SGW)は、サロベツ川河口域に発達した高層湿原であり、約500cmの厚さで泥炭が堆積している。一方、中の峰平湿原(以下NW)は、天塩山地の蛇紋岩上に発達した山地湿原であり、泥炭層の厚さは約60cmである。泥炭微生物群集が湿原の物質循環に及ぼす影響評価のための基礎調査として、形成過程や堆積深度などが異なる2湿原を対象に、16S rRNA遺伝子にもとづくバクテリア(624クローン)およびアーキア(368クローン)のクローンライブラリーを作成し、微生物群集構造の比較を行った。

全バクテリアクローンの50.5%がAcidobacteriaに分類され、すべての泥炭層に分布していた。また、各層位に占める割合は深度ごとに異なるが、SGWのほとんどの深度でCandidate divisionであるNC10あるいはOP8に分類されるクローンが検出された。一方、NWでは70cmのみでCandidate divisionのクローンが検出された。

アーキアクローンについては、全体で20.4%がメタン生成菌(MethanocellalesMethanosarcinalesおよびMethanomicrobiales)に分類されたが、NWでは74.1%、SGWでは4.2%で、その存在割合が湿原ごとに大きく異なった。SGWでは、Thermoplasmataに分類されるアーキアクローンが全深度から検出された。さらに、SGWの100cm付近を境に、浅層ではSd-NAクラスターのクローンが、深層ではC2クラスターに分類されるクローンが主たるグループを構成していた。

以上の結果から、同質のように見える泥炭であっても、微生物の群集組成は空間的に異なることが示唆された。


日本生態学会