| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-245

アオコの分布拡大に関する生態・分子系統地理学的研究

*中野伸一,奥田昇,天野一葉,大林夏湖,小林由紀,田中拓弥,程木義邦(京大生態研),渡邉信,田辺雄彦(筑波大生物学類),近藤竜二,廣石伸互,高尾祥丈,片岡剛文(福井県立大海洋生物資源)

アオコは、湖水中のアオコ原因植物プランクトンが大量に増殖して起こり、世界各地の富栄養化した湖沼に普遍的に見られる。アオコが発生すると景観を悪化させ、腐敗したアオコが悪臭を放ち、さらにはアオコが作る強い毒により海外では人間や家畜等の死亡の被害が報告されている。アフリカや東南アジア諸国ではアオコの発生が深刻化しており、とくにアフリカでは多くの人が良質な水を利用できない状態が続いている。このように、アオコの防除は世界中の富栄養化した湖沼で緊急課題となっているが、未だに問題は解決されていない。アオコは、風気流、鳥類などに運ばれて国内外の湖沼に分布を拡大しており、各湖沼には由来の異なる遺伝的に多様なアオコ群集が存在し、その一部に有害性の高いタイプが含まれると考えられる。湖沼の水質は周辺の人間活動に強く影響されるため、アオコ群集の中でどのタイプが優勢となるかは、周辺の人間活動をも含めた湖沼環境総体により決定されていると考えられる。本発表では、環境省地球環境研究推進費による「アオコの分布拡大に関する生態・分子系統地理学的研究」の紹介を行う。本研究では、最先端のバイオテクノロジーと大型環境解析システムを駆使し、アオコの生態と分子系統地理分布について明らかにするとともに、湖沼周辺の人間活動として土地利用形態の変遷や周辺住民の生活文化特性の調査も行い、アオコ群集組成との対応があるか検討する。


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