| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-251

北極圏における黒紋病菌によるキョクチヤナギの光合成活性への影響

*増本翔太(総研大・極域),内田雅己(極地研), 伊村智(極地研),東條元昭(大阪府大・生命環境), 井上武史(総研大・極域),神田啓史(極地研)

高緯度北極域のノルウェー・スピッツベルゲン島・ニーオルスンにおいて、タールスポット病 (黒紋病) と呼ばれる植物病原菌によるキョクチヤナギの光合成への影響について調査を行った。タールスポット病の分布、感染葉におけるタールスポット病徴部被覆面積、感染葉のクロロフィル蛍光活性の測定、顕微鏡による感染葉の形態観察を行った。その結果、タールスポット病は調査地の広範囲に分布していること、感染葉におけるタールスポット被覆面積は大きく、感染によって被覆部では組織が破壊されてしまうこと、感染葉でも非被覆組織は健全葉と同等の蛍光活性があることがわかった。今回の研究は、タールスポット病がキョクチヤナギの1次生産に与える影響を明らかにするうえで、その被覆面積が重要であることを示した。今後、同病によるキョクチヤナギへの影響を正確に知るためには感染時期や被覆部の拡大速度を明らかにする必要がある。今後の極域における植物病原菌の研究は宿主植物との相互関係を明らかにするだけでなく、北極域の気候変動に伴う植物群落への影響を予測するためにも必要となる。


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