| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-258

成層したダム湖における浮遊性メタン酸化細菌の群集構造

*堤正純(北大・低温研), 小島久弥(北大・低温研), 岩田智也(山梨大・工学部), 福井学(北大・低温研)

湖沼から大気へのメタン放出量は、地球上での自然な放出量の6~16%に相当すると推定されている。湖沼の嫌気的な環境で生成されたメタンの大半は、好気的な底泥表面および水柱においてメタン酸化細菌により酸化される。部分循環湖のような底泥表面が嫌気的な水界においては、水柱におけるメタン酸化が重要になる。また、メタン酸化細菌によりメタンから合成された細胞構成物質は、他の生物の炭素源として機能し得る。湖沼の浮遊性メタン酸化細菌の活性に関する従来の知見から、湖沼生態系におけるメタン酸化細菌を介した炭素フローの重要性が示唆されている。しかし、湖沼の浮遊性メタン酸化細菌の群集構造を種レベルおよび属レベルで解析した例はまだほとんどない。

本研究では、部分循環湖である山梨県塩川ダムのみずがき湖において、異なる季節に計5回調査を行った。調査内容は、水深ごとの浮遊性メタン酸化細菌群集構造(構成および存在量)の解析と各種環境パラメータの測定である。

その結果、水柱のメタン酸化細菌群集は、水深、季節に関わらず、互いに近縁な系統群により構成されており、Methylobacter属の好冷性または耐冷性の株に近縁なものにより優占されていた。その構成は、酸素躍層直下の酸素がほぼ枯渇した層を境に異なっていた。上層水温が15℃以上を示す夏季には、水温躍層を境としても異なっていた。また、浮遊性メタン酸化細菌は、酸素躍層およびメタン躍層付近において卓越していることが示唆された。この水深は、メタンの安定同位体比から推定された、活発なメタン酸化が起きている層と一致した。以上のことから、本調査地の浮遊性メタン酸化細菌群集は、酸素濃度またはメタン濃度、および温度に強く影響を受けていることが示唆された。


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