| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-261

淡水湖沼における硫黄循環関連細菌の多様性解析

*吉川優紀, 小島久弥, 福井 学(北大・低温研)

硫酸還元菌は電子供与体として様々な有機酸を分解するため、硫黄だけでなく炭素循環にも大きく寄与していると考えられている。一方、硫黄酸化細菌は硫酸還元菌により生成された硫化水素を無毒化する役割を担う。硫黄循環を駆動するこれらの微生物グループの多様性に関し硫黄酸化細菌、硫酸還元菌のそれぞれについて個別に解析した研究例はあるが、両者を同時に対象とした研究は少ない。

本研究では硫酸還元菌、硫黄酸化細菌の双方が保持するaprA遺伝子を対象とした分子生物学的解析により、硫黄循環関連細菌を一括して検出することを試みた。国内17カ所の淡水湖沼の底泥からDNAを抽出し、aprA遺伝子断片をPCRにより増幅後、DGGE解析を用い各バンドの塩基配列を決定し系統解析を行った。また、5種類の有機酸塩を各々唯一の炭素源とした硫酸還元菌用集積培地を調整し、5カ所の淡水湖沼底泥をそれぞれの培地に加え培養を行った。その後環境試料と同様の解析を行い、集積条件との比較を行った。

培養系から得られた配列は全て既知の硫酸還元菌に近縁であった。安息香酸塩を基質とした培養系からは底泥の採取地によらずDesulfobulbusに近縁な配列が得られた。また、ある採取地の底泥からは、集積条件に関わらず胞子形成型Desulfotomaculumに近縁な配列が得られ、配列はお互いに完全に一致していた。一方で環境サンプルからは硫黄酸化細菌、硫酸還元菌が検出された。得られた硫黄酸化細菌由来の配列の多くはThiobacillusに近縁であった。これに対し硫酸還元菌は海水にみられるDesulfobacterや好冷性Desulfoftigus、好熱性Thermodesulfovibrioに近縁なものなど多様な配列が検出された。系統解析の結果、これらのいくつかの配列は既知の配列とは大きく異なるものだった。


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