| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-283

首都大のイノシシはどこから来たのか?:多摩地域におけるイノシシの現状

*有馬貴之(首都大・環境), 野田江里(首都大・環境), 生亀正照(首都大・環境), R. Eranga H. R. (首都大・環境), 白柳かさね(首都大・環境), 内藤慈弘(首都大・環境), 山菅香(首都大・環境), 中村亮二(首都大・理工), 沼田真也(首都大・環境)

イノシシ(Sus scrofa)は森林や草原に生息する大型哺乳類であり、東京都では八王子市を含む西部地域が分布の中心と考えられている。2009年7月に、八王子市南部に位置する首都大学東京・南大沢キャンパス内の約10haの松木日向緑地において、イノシシが確認された。この緑地では以前よりタヌキやアナグマの生息が確認されていたが、幹線道路等によって周囲の森林から孤立しており、イノシシなどの中大型哺乳類の生息は確認されていなかった。本研究では、イノシシなど中大型哺乳類の都市緑地間の移動経路や都市緑地の利用様式を明らかにするため、1)画像解析や地上踏査による大学周囲の緑地帯の把握、2)近辺における目撃情報や農業被害などの収集を行った。その結果、緑地帯の繋がりが松木日向緑地の南北方向に確認され、周囲約2kmにはイノシシが定住可能と思われる小山田緑地、小山内裏公園、柚木・鑓水の3つの大規模緑地が確認された。一方、日向緑地の北部と南部には幅15m以上の都道が、西部と南部には道路やマンションなどが密集した住宅街が存在し、これらの道路や宅地が緑地の繋がりを所々で分断していることも明らかとなった。他方、八王子市西部及び北部ではイノシシの目撃、捕獲情報があった。2008年には、小山田緑地周辺の住民によりイノシシの群れが目撃され、2009年3月には松木日向緑地内でイノシシの痕跡と思われる掘り返しや足跡が観察されていた。これらの結果から、確認されたイノシシは、周囲の大規模緑地から、住宅街などに残されたわずかな緑地帯を利用して、移動してきた可能性があると推察した。


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