| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-297

コシアカツバメの巣の分布による広島大学東広島キャンパス周辺の環境評価

*亀岡大真(広島大・総合科),中越信和(広島大・国際)

ツバメHirundo rusticaは英名でBarn Swallowと書き、直訳で『納屋ツバメ』と呼ぶように人工物の納屋や木造住宅に巣をよく作り、育雛を行う。ツバメは野生動物でありながら、そのように昔から人と大変近い距離間で生息している。そしてツバメは学校での環境教育の一環として用いられ、また会社のシンボルマークとしても使われるなど、身近な生物種として多くの人々に親しまれている。しかし、ツバメは木造住宅や納屋といった木造を好む鳥であり、近年コンクリート製の建物が増加している日本では今後の個体数の増加に歯止めがかかるのではないかと考えられる。その一方で、一般の人々にはまだあまり知られていないが同じツバメ科でコンクリート製の建物を好む種が確認されている。そこで本研究ではコンクリート製の建物を好むコシアカツバメHirundo dauricaに着目した。近年の建物の材質の変化やコシアカツバメの特徴から現在よりも個体数を増やし、分布域も拡大するのではないかと考えられる。コシアカツバメはツバメと様々な点で違いが見られるが、生態に関する調査は十分に行われておらず、その生態には不明な点が多い。本研究では広島大学東広島キャンパスに多数確認できるコシアカツバメの巣を指標として、その生態に関する調査を行った。

本調査では広島大学東広島キャンパス内の建物(6階以上)計8ヶ所の各階のベランダを調査して、コシアカツバメの巣を874個確認した。巣の数、フンの有無を用いて、各建物間、各階にそれぞれで分析を行い、コシアカツバメが巣を作る際に重要視する要因を探った。その結果から、ベランダの庇の構造が巣を作るための大きな要因になっている可能性が認められた。これは雨風による巣の風化を避け、巣作りを妨害する外敵から発見及びそれに伴なう雛の捕食等の危険性を低減するためではないかと考えられる。


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