| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-336

二次遷移初期林における現存量推定 〜相対成長式の改良と検証〜

*安木奈津美(早稲田大・教育),吉竹晋平(早稲田大・院・先進理工),小泉博(早稲田大・教育)

遷移の各段階における現存量を正確に把握することは、遷移のメカニズムを理解する上で重要である。日本では森林面積の約半分が二次林であるが、種の変動が特に大きい10年生〜20年生の二次林の現存量に関する情報は非常に少ない。また、そのような林分では従来の相対成長法で現存量を推定するには限界がある。そこで本研究は、まず、二次遷移初期林の現存量を明らかにした上で、複数の変数を用いた様々な相対成長式を作成し、二次遷移初期林に適応できる現存量推定法の確立を試みた。

岐阜県乗鞍岳の12年生二次林において、2m×2mのコドラート3か所の地上部を全て刈り取り、当該サイトの現存量を明らかにした。その後、コドラート外から12種182本の立木を伐採し、樹高、地際直径、生枝下直径、胸高直径および、各直径を二乗したもの、各直径を二乗して樹高を掛けたものを変数とした全樹種共通の相対成長式を作成した。また、樹種別、樹形別、太さ別で場合分けした相対成長式を作成した。さらに、得られた相対成長式の検証のために、作成した相対成長式をコドラートに適用し、その推定値と実測値を比較した。

本研究で得られた現存量の結果と既存の研究の比較から、単位面積当たりの光合成器官量は遷移の早い段階で最大値に達することが明らかとなった。このことから、若い二次林における単位面積当たりの炭素固定量は、無視できない量である可能性が示唆された。複数の変数を用いた様々な相対成長式を検証した結果、地上部現存量の推定には、地際直径を変数とした全樹種共通の相対成長式で推定する方法が最適であると分かった。ただし、コドラート内に小個体の割合が多い場合、現存量が過大評価される傾向が見受けられた。


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