| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-338

ササ一斉開花枯死後14年目のブナ稚樹の分布と成長と林内環境の不均一性について

*佐藤朋華,山月融心,井上みずき,星崎和彦,阿部みどり,蒔田明史(秋田県立大学)

日本の冷温帯を代表するブナ実生の定着はササの一斉枯死によって促進される。しかし、ササが枯死した林内全域で一様にブナが更新するわけではない。ササ枯死後の林内では、回復するササとブナ稚樹が競合する。また、林床の光環境は林冠木の展葉フェノロジーとササの回復の影響を受け時空間的に不均一になると考えられる。そこで本研究では、ササ枯死後の林床の光環境が林冠構造とササの回復を介して、ササ枯死後に定着したブナ稚樹の成長に与えた影響について明らかにすることを目的とした。

十和田湖外輪山甲岳台ブナ林調査区(1995年にチシマザサが一斉開花)のササ枯死域(0.67ha)に、4m2方形区を77か所配置し、樹冠投影図から各方形区の林冠タイプをブナ・ホオノキ・ギャップ・その他に区分した。各方形区で1年生以上のブナ稚樹の樹高と当年枝長を測定し、環境条件としてササ層の上(高さ2m)と下(高さ50cm)の光条件(月1回)、ササの稈密度及び群落高、その他の高木種の稚樹の樹高を測定した(年1回)。

ブナ稚樹の樹高と当年伸長量はギャップ内とホオノキ樹冠下で高く、ブナ樹冠下では低かった。林床の光環境は、ササ層より上でギャップ内では年中明るく、ホオノキ樹冠下は春先のみ明るい光環境だったが、ササ層より下では林冠タイプや季節に関係なく一様に暗かった。ササの稈密度と群落高はギャップ内とホオノキ樹冠下で高く、ブナ樹冠下で低くなった。その他の稚樹の樹高はギャップ内で高かった。これらから、ギャップ内とホオノキ樹冠下の光環境はブナ稚樹の現在のサイズ分布を示していると考えられる。一方、ササ層より下(高さ50cm)の光環境は一様に暗かったことから、林冠の状態に関係なく樹高50cm未満のブナ稚樹の成長にとっては不利であると考えられる。


日本生態学会