| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-341

佐渡島天然スギ林におけるサワグルミの更新特性

*中野陽介(新潟大・農),金子洋平(新潟大・超域研究機構),本間航介(新潟大・農),崎尾均(新潟大・農)

サワグルミは、一般的に大規模撹乱に依存して渓谷・沢沿いで更新する。一方、尾根上に成立するサワグルミ林も存在することが知られているが、それがどのように更新しているのかはよくわかっていない。また、サワグルミは豪雪地帯で萌芽による株立ち樹形をとるが、その生態学的意義の評価も行われていない。そこで、本研究は豪雪地帯の尾根部に成立するサワグルミ林の更新機構を調べた。

大佐渡山地にある新潟大学演習林の稜線付近に50m×50m方形区を設置し、毎木調査を行った。方形区内はスギが優占し、サワグルミがパッチ状に分布する。2009年にサワグルミ当年生実生133本を個体識別し、その生残過程を追跡、セーフサイトを特定した。幼稚樹(H≦1.3m)と稚樹(1.3<H<3m)の位置と樹高・地際直径・幹数を記録した。

サワグルミ個体群の直径階分布はL字型を示した。当年生実生の主な発芽基質はリター上であり、10月中旬までの生残もリター上で多かった。その生残と光環境に相関はみられなかった。一方、幼・稚樹はサワグルミパッチの縁やスギ林内のリター上に定着していた。幼・稚樹段階サワグルミ個体は、地際直径2〜3cmに生長した段階で匍匐形状になることにより見かけの樹高成長が止まり、それ以降の直径クラスで幹は枯死していた。その直径クラス個体は、萌芽によって個体としては生残していた。若齢・成木個体の1株内平均萌芽数は23.8本であった。その多くは小さなサイズの幹であり、主幹サイズに至る幹は僅かであった。

以上の結果より、このサワグルミ個体群は主として実生更新により維持されていることが示唆された。しかし、リター上で発芽・定着したサワグルミ実生は、その後の幼・稚樹段階で雪圧により次の成長段階への移行が困難になる。その際に萌芽により個体維持していると考えられた。


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