| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-003

ミヤマガマズミとコバノガマズミにおける訪花昆虫の共有パターン

*宇都宮 大輔,笠木 哲也,中村 浩二(金沢大)

近縁なスイカズラ科植物であるミヤマガマズミとコバノガマズミは、北陸地方では落葉広葉樹林内で同所的に生育することが多い。ミヤマガマズミは4月下旬〜5月上旬、コバノガマズミは5月上〜中旬に開花し、両種の開花が重なる時期がある。金沢市郊外で、ミヤマガマズミとコバノガマズミの訪花昆虫相および訪花頻度を調べ、両種の開花時期と訪花昆虫をめぐる競合状況の関係を検討した。

ミヤマガマズミのみが開花する時期(4月下旬)を1stステージ、両種が開花する時期(5月上旬)を2ndステージ、コバノガマズミのみが開花する時期(5月中旬)を3rdステージとした。訪花昆虫の個体数はステージ後期ほど増加した。全個体数のうち約85%が甲虫目だった。甲虫目では23種中上位4種が約90%を占めた。このうち、ガマズミトビハムシは1stステージのミヤマガマズミのみを訪花した。他の3種(キバネホソコメツキ、クロフナガタハナノミ、キイロハナムグリハネカクシ)はガマズミ両種を訪花した。これら4種をまとめた訪花頻度は、ミヤマガマズミでは1stステージに比べて2ndステージで低下し、コバノガマズミではステージ間で有意差がなかった。2ndステージにおけるミヤマガマズミへの訪花頻度の低下は、ガマズミトビハムシの訪花がなくなったためだった。ガマズミトビハムシを除く3種の訪花昆虫について、2ndステージの両種の開花割合から期待される訪花個体数を実測値と比較した。キイロハナムグリハネカクシを除く2種は、期待値よりもコバノガマズミへの訪花個体数が多かった。

ミヤマガマズミとコバノガマズミは訪花をめぐって競合している可能性がある。また、ミヤマガマズミは早期に単独で開花してガマズミトビハムシの訪花を受けていた。両種の訪花昆虫をめぐる競合がミヤマガマズミの開花時期の早期化に関与している可能性が示唆された。


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