| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-023

アワダチソウグンバイがセイタカアワダチソウのリターの初期分解に及ぼす影響

*鈴木智之, 安東義乃,大串隆之(京大生態研)

リターの分解速度にその質が大きく影響していることは広く知られている。また、植物の質が昆虫の食害によって変化することも明らかになってきた。近年、植物の遺伝型やクローンによってリターの質が異なるという報告も増えている。加えて、植物の遺伝子型によって誘導反応が異なる例も報告されている。しかし、植物の遺伝型やクローンの効果と、食害の効果、両者の交互作用を分離した研究は少ない。本研究では、<1>植物のクローンと昆虫の食害がリターの質に及ぼす影響を分離して検討し、<2>リターの質が分解速度に及ぼす影響を検討した。

<1>地下茎で繁殖するセイタカアワダチソウSolidago altissimaと優占植食者アワダチソウグンバイCorythucha marmorataを用いたケージ実験を行った。セイタカアワダチソウの3種のクローンに、アワダチソウグンバイの食害量を尺度に未食害・低食害・高食害の3つの処理を施し、処理前後の生葉の質(C・N含有率)と処理期間中に生産されたリターの質(C・N含有率、総フェノール量)を測定した。リターのN含有率について処理区間で有意差が見られ、未食害<食害という結果になった。クローンの効果はリター中の総フェノール量についてのみ見られた。クローンと食害の交互作用は見られなかった。

<2>セイタカアワダチソウのクローン9種を自然条件下で育て、アワダチソウグンバイによる食害の程度を記録し、冬にリターを回収した。リターの質の測定(C・N含有率、全リン量、総フェノール量)とリターバッグ実験を行った。分解期間は15日、30日とした。N含有率と総フェノール量の間に相関があり、測定項目の中ではN含有率が30日の重量損失について最も説明力を持っていた。

これらの結果より、この系では植物のクローンと昆虫の食害のどちらが、分解速度により大きな影響を及ぼしているかを議論する。


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