| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-027

細根と根滲出物の分布パターンに対するトビムシの応答

*藤井佐織, 山田明徳 (京大院・農), 福島慶太郎 (京大・フィールド研), 齋藤星耕, 北山兼弘 (京大院・農), 武田博清 (同志社大・理工)

土壌生物が利用する炭素源には、植物の根が放出する滲出物など易分解性のものと、枯死リターなど難分解性のものがある。これらの炭素源をもととする土壌中の食物連鎖は、易分解性炭素を利用する細菌を起点とする細菌経路と、難分解性炭素を利用する腐生菌を起点とするカビ経路と呼ばれる2つのエネルギー経路に分けて考えられてきた。土壌中の小型節足動物であるトビムシは、主にリターや腐生菌を摂食し、カビ経路に属すると考えられてきたが、最近のトレーサー実験などから易分解性炭素にも大きく依存していることが明らかになってきた。そこで本研究では、易分解性炭素である根滲出物を起点とする系に着目し、土壌中に不均一に分布する植物の根が、土壌中の炭素濃度の不均一性を作り出し、トビムシの分布に影響するかどうかを調べた。直径20cm、高さ18cmの鉢を6鉢用意し、土は砂と赤玉土を2:1の割合で混ぜたものを使用した。鉢の中央にヒノキの当年性苗木を1本植え、各鉢にオオフォルソムトビムシ(Folsomia candida)を投入した。4ヶ月後、ポット内の土を根とともに24個に分割し、各分割コアの溶存有機炭素濃度、細根重、トビムシ個体数を測定した。細根重と溶存有機炭素濃度の間には正の相関がみられたので、溶存有機炭素は根滲出物に由来するものと考えられる。発表では、細根によって作り出された炭素源の不均一な分布に対するトビムシの分布パターンを報告し、根とトビムシの関係について考察を行う。


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