| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-034

新潟市の海岸林に飛来する果実食鳥の食性

*金子尚樹(新潟大院・自然科学),千野奈帆美,南沙織(新潟大・農),小松吉蔵,千葉晃,佐藤弘,太刀川勝喜,赤原清枝,藤沢幹子,市村靖子,南雲照三,沖野森生,伊藤泰夫(にいがた野鳥の会),中田誠(新潟大・自然科学系)

鳥種ごとに利用している植物種を把握することは鳥と植物の相互関係の評価にとって重要である。本研究では、海岸林に飛来する鳥類から直接採取した糞の内容物をもとに鳥類の果実利用について調べた。

調査地である新潟県新潟市の海岸林は、近年管理の遅れや温暖化によって植生遷移が進行し、クロマツ林から常緑広葉樹を多数含む混交林へと変化している。調査を行った「野鳥の森」では鳥類標識調査が行われており、多くの鳥が渡りの中継地として利用していることが明らかになっている。調査は2009年9月から11月に行い、鳥類をカスミ網によって捕獲し、布製の袋に約30分間入れて糞を採取した。

期間中に27種521個体の鳥から糞が採取された。果実食鳥とされる20種のうち、糞中に種子が見られたのは13種であった。ヒヨドリやマミチャジナイ、メジロの糞にはエノキ、アカメガシワが見られ、アカハラやシロハラの糞にはモチノキやゲッケイジュが見られた。今回の結果では、常緑広葉樹に比べて落葉広葉樹の利用が多く見られ、特に落葉広葉樹のエノキは最も多く利用されていた。エノキは林内に多数存在し、期間中にそのほとんどが熟していたが、常緑広葉樹であるモチノキには赤熟していない果実も見られた。渡りの中継地として飛来する時期にはより熟した果実が利用される傾向にあり、熟期の遅い常緑樹の利用が少なかった可能性が考えられる。このような果実は、この場所を越冬地として利用するヒヨドリなどに利用されているのではないか。


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