| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-043

テトラヒメナと大腸菌の人工共生系における個体群動態

*末吉眞人(大阪大・工), 松本佑介(大阪大・情), 森光太郎(大阪大・情), 柏木明子(弘前大・農生), 細田一史(大阪大・情), 四方哲也(大阪大・情)

自然界には様々な共生関係が存在するが、特に細胞内共生は真核細胞に見られるミトコンドリアや植物細胞に見られる葉緑体など、生物が飛躍的に進化するための重要な要素だと考えられている。これはもともと捕食被食関係や寄生関係にあったものが互いに必須の関係に至ったのではないかと考えられている。これまで遺伝子系統解析など様々な方法で、細胞内共生に至ったという過程が調べられている。しかしこの過程における、利害関係に基づいた個体群動態の変化や形態変化などは実際に観察しなければ調べることができない。そこで我が研究室では、細胞内共生の過程を観察するために、天然では共生関係に無い捕食性原生生物テトラヒメナと栄養要求性赤色蛍光大腸菌による人工共生系が構築した。ここではテトラヒメナと大腸菌は互いに栄養相補な相利共生の関係にあり、捕食によりテトラヒメナの細胞内部に入った大腸菌が消化されずに残り互いに栄養を供給し合って、いずれは細胞内共生に至ることを期待している。

私は個々の細胞のサイズ、蛍光強度などを一度に多細胞測定することができるフローサイトメトリーを用いて、二者の混合直後における、個体群動態および大腸菌の形態の経時的な変化を調べた。これにより大腸菌が長く伸びるというサイズ変化とそれに伴う個体群動態への影響を観察することができた。

今後はこの共培養の進化実験を行い、個体群動態や形態の変化を観察することで互いに関係が強まっているか、さらには細胞内共生に向かっているかなどを調べていきたい。


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