| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-055

2種類の大腸菌株による人工栄養共生系の実験進化

*浅尾晃央(大阪大・生命),細田一史(大阪大・情報),森光太郎(大阪大・生命),柏木明子(弘前大・農生),山内義教(大阪大・生命),城口泰典(大阪大・情報),鈴木真吾(大阪大・情報),四方哲也(大阪大・情報)

既存の共生系は、互いに相手が存在するという環境に相互適応した状態であろう。その起源や適応過程については、遺伝子系統解析等により理解が深められている。しかし起源や適応過程は過去におこったことから、両者の利害関係の変化や個体群動態を観察することが出来ない。

生物は自分の増殖に有益になり得る相手と初めて出会ったとき、どのような行動をとるのか?特に、原始的な生物である細菌類ではどうなのか?こうした問いに答えるため、私は実験室内で新規に単純な共生系を作り、この適応過程を観察するという研究を行った。具体的には、栄養要求性の異なる2種の大腸菌の栄養共生系について、継代培養をおこない、個体群動態の変化を観察する。

実験:2種の大腸菌の共培養は、ラグ期(増殖しない)、増殖期、飽和期(増殖がとまる)と分けて考えることが出来る。この飽和期に、培地を取り除いて菌体だけを希釈して、新しい培地をもつ試験管へと植え継いだ。

結果:両者を植え継ぐごとにラグ期が短くなり、それによって飽和期までの時間が短くなった。つまり、全体として増殖が速くなった。また長期共培養させた菌を一度クローン化(シングルコロニー化による)しても、再共培養させると個体群動態は増殖の速さを維持していた。

考察:ラグ期は、菌体のアミノ酸漏洩量が増加する表現型変化がおこるまでの期間であることが知られている。つまり、ラグ期が短くなっていたことから、表現型変化がより早く起こるようになったと考えられる。また、クローン化しても個体群動態が変化しなかったことから、共培養の履歴が保持されている事もわかった。この保持は遺伝情報によるものか否かは明らかでない。


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