| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-082

クワガタムシ共生生物の多様性 -クワガタにまつわるエトセトラ-

岡部貴美子*,神崎菜摘,升屋勇人(森林総研)

樹液は様々な昆虫が集まる場として、子供から大人まで、アマチュアから研究者まで誰からもよく知られている。しかしここに集まる昆虫の体表面〜体内から見つかる共生生物は、ほとんど知られていない。私たちは日本各地の様々な樹種の主に樹液からクワガタムシ成虫を採集し、体表面や体内の寄生、便乗生物相を調べた。その結果、便乗ダニおよび共生ダニ(クワガタナカセ)9種を採集した。クワガタナカセは成虫の体表面にのみで繁殖可能なダニといわれるが、ミヤマクワガタやノコギリクワガタ成虫からは全く発見されなかった。またオオクワガタ、ヒラタクワガタ、コクワガタの体表面のクワガタナカセは同種と考えられた。それぞれのクワガタナカセ体表には、低頻度ながらもラブルベニア類の1種Dimeromyces japonicus Kishidaが寄生していた。調査したすべてのクワガタ個体が何らかの線虫を保持していたが、培養株を確立し、同定できた線虫は合計7種であった。さらにMOTUとして3種が確認できた。これらはいずれも便乗線虫であり、寄生性や病原性は有していないと考えられた。いくつかの種は、耐久型幼虫の状態で交尾器、産卵管、腹部背面などから検出されていること、検出頻度が高いことから、恒常的にクワガタムシ類を利用するものと考えられたが、媒介昆虫の種特異性は認められなかった。クワガタムシおよびその他の樹液に集まる昆虫の調査結果から、樹液浸出部で共生生物の移動が起こっている可能性が示唆された。


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