| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-099

植生管理のあり方が都市域コナラ二次林の種多様性に与える影響

*吉田葵,持田幸良(横国大・教育人間科学)

里山は生物多様性保全への貢献が評価されるが、植生管理が放棄され、種多様性の低下が問題となっている。里山は環境要因の組み合わせと人手による植生管理が加わって形成されている。そのため、植生管理と環境要因の双方の視点からの種多様性に対する影響の検討が必要である。一方、里山における植生管理と種多様性の研究の多くがα多様性のみに着目し、立地環境の差異は考慮していない。そこで本研究では立地環境の差異を考慮し(1)下草刈りが林床のα、β、γ多様性に与える影響(2)各環境要因と種多様性の関係を明らかにすることを目的とした。その上で種多様性維持・向上のための植生管理のあり方を検討した。

横浜市のコナラ二次林が優占する里山で、下草刈りからの経過時間を指標として調査区を設定し、ポイント法による林床の植生調査を行った。立地環境として光環境(相対光量子束密度)、土壌の窒素・有機物・水分含有量、リター層の厚さ・重量、遷移段階を調査した。

解析の結果、(1)下草刈りによる植生管理はα・β多様性の双方を高めており、γ多様性も高めていた。(2)種多様性に強い影響を与える環境要因は、常緑樹の繁茂によって影響される林床の光環境とアズマネザサのバイオマス、リター重量であると明らかになった。つまり、光環境の改善とアズマネザサのバイオマス、リター除去の植生管理がα、β多様性の双方の向上に有効である。また常緑樹の繁茂は遷移の進行を現すので、光環境に影響しているのは遷移段階と理解される。以上の結果から、より種多様性を高める植生管理のあり方は、立地環境が異なる場合、アズマネザサの繁茂や常緑樹の割合という遷移段階に適合した管理をする必要がある。すなわち、下草だけでなく常緑低木類を含めた管理による光環境の改善とアズマネザサのバイオマスとリター除去のための頻度の高い落葉かきが効果的である。


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