| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-101

サラシナショウマにおける送粉エコタイプとDNA系統の対応関係

*楠目晴花,長野祐介,市野隆雄(信州大・理)

日本中の低地から高地にかけて広く分布しているサラシナショウマは送粉エコタイプの観点からPellmyr(1986)より3タイプに区別された。それによるとEcotypeIは高標高地の林床に生育しポリネーターとしてマルハナバチ類を利用するタイプであり、中標高地の林縁に分布するEcotypIIは芳香を放つことでチョウ類を呼び寄せポリネーターとしている。EcotypeIIIは中低標高地の林床に生育し他のタイプより遅れて開花するとされている。異なるタイプの個体が側所的に生育する地点が存在することはこれらが種分化後、二次接触している可能性を示唆している。一方、Yamaji et al.(2005)は核DNAのITS領域における変異をもとにサラシナショウマを複数のリボタイプにわけた。サラシナショウマの送粉エコタイプが初期の種分化を反映しているのであれば、送粉エコタイプに対応した明確な遺伝的な変異が存在するはずである。これらの送粉エコタイプとリボタイプの対応関係の検証はこれまで行われていない。そこで本研究ではサラシナショウマにおける送粉エコタイプとリボタイプの対応関係を明らかにすることを目的として、長野県内の6カ所から全エコタイプを含むサンプルを採集し、リボタイプの判別を行った。

核DNAのITS領域を解析した結果、Yamaji et al.(2005)が見いだしたリボタイプのうち、少なくともRibotype2、Ribotype3、およびRibotype1+3の3タイプが存在していた。送粉エコタイプとリボタイプを対応させたところ、少なくともEcotypeIにはRiobotype3が、EcotypeIIにはRibotype2が、EcotypeIIIにはRibotype1+3がそれぞれ対応しており、送粉エコタイプに対応した遺伝的変異が存在することが明らかになった。


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