| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-129

四万十川流域における過去20年間の陸生鳥類群集とその生息環境の変化

佐藤重穂(森林総研四国)

近年、国内に生息する森林性や草原性の鳥類(以下、陸生鳥類と呼ぶ)の一部の種が著しく減少していることが指摘されている。こうした種の減少の原因が、個々の調査地の生息環境の変化によるものか、あるいは夏鳥の越冬地の環境変化や温暖化の影響といった要因によるものかを明らかにするには、個別の調査地の環境の変化の有無について検討する必要がある。しかし、鳥類相とその生息環境について長期にわたって記録されている地域はあまりない。

四国南西部の四万十川流域では、1980年代半ばに数十地点で鳥類生息調査が実施されている。この調査地点のうち環境の大半が森林で占められていた10箇所を抽出して、2003年から2004年に繁殖期の鳥類調査を実施して、年代間で比較することにより、陸生鳥類群集の変化について検討した。また、1980年代と2000年代の二つの時期に撮影された航空写真を用いて、調査地の環境の変化を検証した。鳥類調査は3kmのラインセンサスを繁殖期に実施した。1980年代と2000年代との間で一箇所当たりの出現種数、合計個体数、鳥類の種ごとの出現箇所数および一箇所当たりの個体数を比較した。

その結果、鳥類の種数は1980年代と2000年代で大差はなく、合計個体数は2000年代の方が多かった。森林性の夏鳥のうち、1980年代に比べて減少した種はサシバ、ホトトギス、サンショウクイ、サンコウチョウなどであり、逆に増加した種としてオオルリ、ヤブサメがあげられた。留鳥ではキジ、モズといった里山生息種が減少し、アオゲラ、ヒヨドリ、ヤマガラ、メジロといった森林性の種が増加していた。これらは繁殖期における森林環境が成熟した一方、中山間地の里山環境が減少したことを反映しているものと考えられた。


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