| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-153

森林生態系からの窒素溶脱量増加および光環境の変化に伴う河川底生生物群集の応答 〜大規模野外実験による検証〜

太田民久* 北大苫小牧研究林

隣接する生態系はその境界域を行き来する物質の移動により、互いに結びついており、このような物質の流動は受容する側の生態系機能に強く影響を与え、食物網や群集構造を維持する上で重要な役割を果たすことが知られている。ハビタット改変等の人為的撹乱はこのような系外物質の性質や動向によって引き起こされる可能性を有している。近年、森林生態系から河川生態系への移入物質である窒素化合物の移入量が東アジア地域の発展により増加傾向にあることが知られている。大気から降下した窒素の供給量が森林生態系の受容量を超えると、余剰の窒素は生態系外に溶脱して河川等に流入する。窒素流入量の増加が河川環境に与える影響として代表的なものに食物網の改変がある。窒素流入量が増加することで河川の食物連鎖の底辺に位置する藻類の生産や落葉の分解が活発になる。そして、それらを摂食する一次消費者である底生生物のハビタットを改変する可能性がある。しかし、窒素流入量の増加に伴う藻類や落葉の反応は光環境の違いによっても制御されることが分かってきた。つまり、窒素流入量の増加が餌資源環境の変化を通して一次消費者である底生生物に与える影響も光環境の違いにより異なることが予想される。本研究では藻類や落葉を消費する河川底生生物が、窒素流入量の増加および光条件の差異によりどの様に応答するかを検証する為操作実験を行った。


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