| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-165

都市近郊林の蝶類に林分レベルの要因が及ぼす影響

*曽我昌史(東京農工大),小池伸介(東京農工大)

これまでの研究から、孤立した森林では、面積や形状、山地からの距離といった地理的要因が、林内に生息する生物種数や生息密度に影響を与えることが知られている。一方、森林内の利用可能な食物資源といった生息地内の質的要因も、生物種の生息に影響することが知られる。そのため、都市近郊林の保全や管理手法を考える上で、双方の要因が生物種の生息に与える影響を明らかにすることは、重要な課題である。そこで本研究では、地理的要因・食物資源要因が、森林に生息する生物群集の生息状況に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

調査地は東京都多摩地域の都市近郊林に位置する20ヶ所の森林(1.1ha〜122ha)で、調査対象には蝶類を用いた。地理的要因には面積・形状・山地からの距離・周囲環境の4つを、食物資源要因には、成虫期の食物資源として着花植物量(草本・木本)・樹液量、さらに幼虫期の食物資源量(草本・木本)の5つの要因を設定した。

調査・解析の結果、蝶類は53種確認された。地理的要因は蝶類の生息種数に影響を与え、面積は正、山地からの距離は負の影響を与えた。面積は多様度指数にも正の影響を与えた。また、成虫期の食物資源要因のうち、蝶類の種数・多様度指数に影響を与えた要因は草本の着花植物量だけであった。特に、林縁での草本の着花植物の被度は、種数・多様度指数に正の影響を与えた。一方、幼虫期の食物資源量が与える影響は種により大きく異なった。さらに、地理的要因・食物資源要因が各蝶類種の生息密度に与える影響を解析し、都市近郊林に生息する蝶類の再分類を行った結果、分類群ごとに、各環境要因に対して異なる反応を示した。


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