| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-173

同所的に出現するミジンコ2種のクローン動態

*阿部周, 石田聖二, 松島野枝, 牧野渡, 河田雅圭, 占部城太郎(東北大・生命)

ミジンコ属(Daphnia)は通常単為生殖で増殖するため、個体群が遺伝的に均一な集団であると想定して個体群動態の研究が行われてきた。しかし近年の分子生物学的手法の発展により、Daphnia個体群は遺伝的に異なる複数のクローンから構成されていることが明らかにされている。単為生殖で増殖するDaphnia個体群内に複数のクローンが存在しているということは、それらのクローンが全く中立であるか、または異なるニッチを占有していることを示唆している。しかし具体的なクローン間の関係や共存の有無など複数のクローンが個体群に存在するメカニズムは全くわかっていない。

そこで本研究では、山形県白鷹湖沼群の畑谷大沼に出現するDaphniadentiferagaleata complex)個体群を対象に、マイクロサテライト座位およびミトコンドリアDNAによりクローン識別を行い、各クローンの季節的変動および環境要因との関連を調べた。Daphniaは 2008年5月下旬から12月中旬まで約週1回の頻度で採集し、サンプル毎に約50個体のDaphniaについてクローン識別した。またサンプリング時には栄養塩、クロロフィル、水温などの環境条件を測定した。調査の結果、この沼では常に複数のクローンが存在していること、しかし、それぞれのクローンの出現頻度や密度には季節性があることがわかった。これら結果をもとに、畑谷大沼のDaphnia個体群に複数のクローンが存在するメカニズムについて議論する。


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