| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-179

日本に自生しないブナ科2種(Quercus laurifolia, Q. robur)におけるカシノナガキクイムシの繁殖成功度

*伊東康人(兵庫農技総セ),飯塚弘明,山崎理正(京大院・農)

カシノナガキクイムシPlatypus quercivorusは,病原菌Raffaelea quercivoraを運搬しブナ科樹木の集団枯死(ナラ枯れ)を引き起こす昆虫である.京都市の京都大学敷地内において,2006年にQuercus laurifoliaが,2008年にQ. roburがカシノナガキクイムシに穿孔され枯死した.これら日本に自生しないブナ科樹種については過去に被害報告がなく,両樹種の寄主としての好適性を評価するために,Q. laurifoliaの玉切り丸太及びQ. roburの切り株の穿入孔に羽化トラップを仕掛け,翌年脱出した次世代成虫を一週間ごとに回収して頭数及び性別を記録した.

穿孔密度は,両樹種とも地上高が増すにつれて減少する傾向がみられた.穿入孔あたりの脱出頭数は,Q. laurifoliaが0-41頭,Q. roburが0-947頭で,1頭以上成虫が脱出(以下,繁殖成功)した穿入孔の割合は,Q. laurifoliaが18.5%,Q. roburが28%だった.Q. laurifoliaで脱出頭数を応答変数とし,地上高,穿孔密度を説明変数とするHurdle modelを構築したところ,繁殖成功に対して地上高が負の影響を及ぼしていた.またQ. roburで脱出頭数を応答変数とし,穿入孔の位置(北からの偏差角,地上高),辺材長,穿孔密度,樹幹表面の凹凸指数を説明変数とするZero-inflated modelを構築したところ,脱出頭数に対して地上高,穿孔密度,凹凸指数が負の影響を及ぼしており,穿孔密度が低い地際の凹部で繁殖成功度が高くなっていることが示唆された.


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